舞踊団公演7曲目:セラーナ

(03)舞踊団公演

セラーナ(メアリ―一世)

国王として類稀な政治手腕を発揮したヘンリー8世も老いには勝てず、年齢を重ねるにつれ健康状態も悪化。55歳の時に病気で亡くなりました。

そして、ヘンリー死去後、ジェーンが生んだエドワード6世に王位が継承されました。しかしながら、エドワードは生まれながらに病弱で、即位後わずか6年半であっけなく亡くなりました。

王位は最初の妻キャサリンの娘、メアリーの元に転がり込みました。後世に悪名高き、ブラッディ・マリー(血まみれマリー)。父に振り回され、母と引き離され、私生児として扱われ、不遇の人生を送ってきたメアリーにとって、ヘンリーが作ったプロテスタントは憎しみの対象でした。

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父・ヘンリーと母・キャサリンの結婚が無効になり、王女だったメアリーは庶子の身分にまで身を落とされます。
庶子。キリスト教の教えでは、罪の子。

キャサリンは罪の子を産んだことになってしまったので、キャサリンとメアリーは一緒にいることを許されず、母子は引き離されてしまいます。

メアリーからしたらアンは、「こいつさえいなければ」と思う憎しみの対象です。
そのアンからメアリーは、自分を王妃と認めろと言われますが、当然ながら認めません。
そこでアンは怒って、メアリーを自分の娘エリザベスの侍女としてしまいます
アンってば、おとぎ話に出てくる意地悪な継母そのもの!
父はメアリーの境遇を知っていましたが放置。
この頃、母キャサリンは亡くなったのですが、メアリーは知らされていなかったそうです。
あまりに可哀想なメアリー。

メアリーの母キャサリンは、スペインの王女様でした。
この頃のイングランドはヨーロッパの弱小国なのに対し、スペインは超大国。
いくら庶子にされてしまったとしても、「私のパパはイングランド国王、ママはスペイン王女。私の祖父母はスペイン国王!」とメアリーにはプライドがあったことでしょう。

一方のアンは、数代遡れば農民だったそうです。
貧乏貴族と爵位を目的とした婚姻関係を結ぶというのを数代続け、ついには伯爵家となったブーリン家。
身分を金で買った、いわゆる、成り上がりです。
血筋の良さからしたら、数段どころか、10段も100段も格上のメアリー。
「王家の血を受け継ぐ私が、農民の血が入ったアンを王妃と認める訳ないでしょ」
アンは、メアリーにそう思われてる気がしていたことでしょう。
劣等感は、優越感を勝ち取る原動力となります。
本来なら格上のメアリーを屈服させることで、アンは自分の方が上だと優越感に浸り、自分を保った。
もし、本当にアンがこのようなことをしたとしたら、アンにとってのヘンリーとの結婚生活は幸せではなかったんですね。
だって、幸せな人は他人を攻撃しない。

メアリーが庶子に落とされたと言っても、それが名目上であることは多くの人には分かります。
ヘンリーは愛人にそそのかされて、王妃を捨てただけ。
ローマカトリック教会は離婚を認めてないから、本当の王妃はキャサリン。
これが世間が普通に思うことだたのではないでしょうか。
だから、メアリーはイングランド国王を父に持ち、スペイン王女を母に持つ、超サラブレッドです。
それ故、メアリーの元に各国の王族から結婚の申し込みがありました。
でも、父ヘンリーは、メアリーの結婚を阻みました。
メアリーの夫、またはその子供が、将来王位を主張してくるのを警戒した為です。

ヘンリー、父親としては最低ですが、国王としては中々の責任感です。
娘の幸せと引き換えですが、イングランドの将来の問題の芽を潰すべく行動しました。
やはり、ヘンリーは家族愛とか夫婦愛ではなく、国の為に生きた王様だったのだと思います。

しかしながら、父の3番目の妻の計らいで、庶子の身分から王女に返り咲き、父の6番目の妻の計らいで、再びメアリーは王位継承権を手にしました。

ヘンリー亡き後の王位継承権第一位は、嫡男のエドワード。
ところが、このエドワード、生まれながらに病弱でわずか16歳で夭折してしまいます。

そして、いよいよ王位は継承権二位のメアリーの元に転がり込みました。

メアリーの即位後すぐに、メアリーの結婚問題が浮上します。
世継ぎを設けなければ、憎きアン・ブーリンの娘エリザベスに王位が渡ってしまいます。
メアリーは、それだけは阻止したかった。
そして、メアリーはスペインのフェリペ王子と結婚しました。
しかしながら、臣下たちは、これに大反対でした。
スペインの王子との結婚は、イングランドがスペインの属国になる危険がありました。
母の祖国スペイン、先進国スペイン、カトリックの国スペイン、そして、ハンサムなフェリペ王子。
メアリーにはスペインへの並々ならない想いがあり、周囲の反対を押し切り、フェリペと結婚しました。

父ヘンリーは妻子には冷徹な夫でした、それは国や国民のことを思ってでした。
家族愛という情に流されては、政治はできないところがあった為です。
でも、メアリーはその逆でした。
イングランドやその国民よりも、母への思慕、夫への恋心、スペインへの憧れが優先されました。

メアリーはフェリペとの結婚を機に、イングランドをカトリック教国に復帰。
プロテスタントの反乱を制圧。
そして、長年の恨みを晴らす復讐劇を起こしました。

父ヘンリーと母キャサリンの結婚の無効を宣告した、大主教たちを火炙りにし、その後もプロテスタントへの弾圧を続け、処刑は繰り返されました。
その光景はあまりに惨く、集まった民衆たちは震えあがり、メアリーは国民の支持を失っていきました。

でも、メアリー、そんなのお構いなし。
気にもしてませんでした。
メアリーにとって一番の気になることは、それはフェリペの間に世継ぎができるかどうかだけでした。
何故なら、エリザベスに王位を渡したくなかったから。
しかしながら、結局、メアリーとフェリペの間には子供はできませんでした。
フェリペのメアリーへの元々なかった愛情は、益々冷めて行きました。

けれども、スペインがフランスと戦争する時には、イングランドからの援軍と資金援助を取り付ける為、メアリーを甘い言葉で口説き、利用しました。
結果、イングランドはフランスに大敗。
大陸にあった唯一のイングランド領を失ってしまいました。
そして、用無しのメアリーを放り出し、フェリペはスペインに帰ってしまい、二度とイングランドには帰ってきませんでした。

フェリペを失い、国土も失い、国民からの支持も失い、絶望の淵に立ちメアリーは狂った。
そして、毎日のように多くのプロテスタントを火炙りにし続けました。


王族の結婚は政治。
お互いの国益の為にする。
国王は、国と国民を幸せにする責任がある。
結婚に愛を求めると、相手国にいいように利用されてしまう。

一人の女性として見たら、メアリーは苦労の連続の人生で、愛情に飢えたとても可哀想な人ですが、国王になるべき人ではなかったと思います。

父ヘンリーが、
「女じゃダメだ!」
と主張し続けたのは、女だと戦場に赴けないからとか、そんな理由ではなかったのではないかと思います。

女には、失う恐れがあり、不安がある。
子を孕み、幼子を育て、身動きが取れなくなる女は、食料を摂ってくる男に依存するという本能からくる傾向がある。
その男に愛されなくなることは、明日の生活の糧を失い、自分と可愛い我が子の命を脅かすことを意味した。

男からの愛を失いたくないと、女は男にへりくだる。
男の機嫌を損ねたくないと、顔色を窺い、言いなりになる。
そこにあるのは、もはや愛ではなく執着。

ヘンリーは女のその特性を知っていたのではないかと思う。
それで、女は国を動かすのに向いていないと判断した。
間違ってない。
やっぱり、ヘンリーは有能な王様だった。

さて、すごく長くなってしまいました。
もしかしたら、私、メアリー一世、すごく好きなのかも。
この人が主人公でも面白かったなって思う程の題材!

こんな悲しくも切なく、そして激しくて美しいメアリーを永井祐里ちゃんが演じます。
血まみれマリー。
血を滴らせ、狂気に舞うメアリー。
祐里ちゃんにぴったり!(←褒めてる(≧▽≦))



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