Antonio El Pipa XXI Festival de Jerez

(07)スペイン

随分と時間が経ってしまいましたが、へレス・フェスティバル最終日のビジャマルタ劇場の公演は、アントニオ・エル・ピパの舞踊団結成20周年記念公演でした。

過去の舞台を振り返り、舞踊団公演に出た有名女性の踊り手が次々に出てきて、ピパ様とパレハを踊りました。

 

 

ピパ様は、へレスの「おらが村のヒーロ」です。

舞台の上に乗る人には、

「皆、私のこと愛してくれて、どうもありがとう!」

くらいの心意気がなくてはならないように思います。

そういう人が出てくると、自然と拍手を送りたくなる。

「私なんて、どんでもございません」

って感じの心持ちって、他人の攻撃から自分を守る為に自分の殻に入ることなので、それをするとお客が拍手を送れない、オレ!と言えない。

そんなおめでたい心意気をもってして舞台に上がる舞台人の中でも、こんなにも、自らを世界中の人から愛されていると信じて疑わない人は珍しいって感じなのが、ピパ様である。(私の勝手な主観です)

踊りがすごく良くなくても、ついピパ様に惹き込まれてしまう。

なんだか、すごいって気にさせてします。

とにかく、ピパ様の存在感はすごいなって思いました。

 

が、しかし、まあ、踊りのテクニックについては、連日連夜すごい人たちの舞台を見続けると、さすがに優劣は分かってしまう。

踊りに関しては、

「ん?」

って思った。

もう年なのかと思った。

前夜のエドゥアルドがあまりにも身体が良く動いたので、ピパ様の身体の重さ、もさっと感、ぼてっと感は否めなかった。

そうなのだ。

タブラオならいざ知らずテアトロは、その人の身体が舞踊家として出来上がっているか、ノリで踊ってるだけの人なのか、すごくはっきり見分けが付く。

タブラオは客席から近いので、足音の激しさとかノリだけでも伝わるものがあるけど、テアトロはそうはいかない。

ぶれない軸、引きあがった身体がないと、見ていて目も当てられない。

へレス仲間と話をして、

「何か気掛かりなことでもあって、練習ができてないんじゃない?」

と言ってた。

真偽の程はその人も私も分からないけど、練習不足なのは本当かもって思った。

映像だとあまり分からないかもしれないけど、マリアと踊ってる時は、足はマリアが音を出してるっぽいなって思いました。

マリアと比べても、全然足が上がってなかったように見えました。

普通、男性の方が足ができる人が多いので、逆なのに。

もし本当に練習不足だとしたら、練習不足って怖いな。舞台にてきめんに出るんだな。。。

 

ゲストの女性バイラオーラとして、メルセデス・ルイス、マリア・デル・マール・モレーノ、コンチャ・バルガスが出演し、ピパ様とパレハを踊りました。

メルセデス・ルイスは、あまり私の好きな踊り手ではありません。

けれども、パレハに関しては、この芸風はいいかもって思った。

男女のパレハは、男性が女性を引き立てる。

男性が女性を気遣いする。

女性は男性に気遣われ、「あら、ありがと」位の感じで、エスコートされることを当然のように受け入れなければならない。

女性に気遣われる男性って、弱いダメ男ってことだから、

「この人は立派な男性だから女性の私が彼のことなんか気遣わないでも大丈夫なのよ」

って態度を取らないと男性が形無しになってしまう。

ワインの栓を開けるのも男性の役割、グラスに注ぐのも男性の役割。女性はワインボトルに手を付けない。それをする女性は水商売の女。

スペイン、さすがは腐ってもエウロパ(ヨーロッパ)。

そんな土地の男女が一緒に踊るのですから当然ながら、日本の男女の形とは異なります。

「どう、私、綺麗でしょ!」

と踊るメルセデスと、

「彼女を綺麗に見せてるのは俺だぜ」

って感じのピパ様は素敵な組み合わせだった。

一方の、この時受けてた先生、マリア・デル・マール・モレーノは、ソロで踊ってる時はその凛とした感じがいいのだけど、いかんせん、ピパに気を遣い過ぎだ。

ピパを立てようとし過ぎて、逆にピパが引き立たなかった。

男同士が踊ってるようだった。

コンチャ・バルガスとピパの間に、色めいた雰囲気はない。

男女のパレハってよりも、親戚同士が楽しそうに踊ってる感じ。

でも、それはそれで良かった。

 

それと、1:01の女の子6人のバタのアレグリアスですが、途中ピパ様も加わり、ピパ様を中心とした群舞になります。

女に囲まれ、この暑っ苦しい風貌。

いやぁ、たまらないね。

ピパ様のすごいところだと思った。

私はやっぱりこういう華のある人が好きだ。

この演目を見て、

「よし、男子生徒1人とバタを履いた女子生徒複数人の演目を作るぞ」

って心に決めた。

華やかでとても素敵だった。

大きな舞台はこういうのがなきゃ。

 

フェスティバル最終日の公演としては、物足りないような、まあ、これがへレスだからいいかというような感じでした。

でも、良かったんだと思います。

私はこういうオーソドックスで、トラディショナルな感じのフラメンコが好きだから、そう思えたのかもしれません。

 

 

ということで、これで今年のへレス・フェスティバルでビジャマルタ劇場で見た公演は以上です。

が、しかし、これ以外にもサラ・コンパーニャやサラ・パウラでの公演もいくつも見ました。

ビジャマルタに比べて規模の小さい劇場なので、ちょっとタブラオに毛が生えた感じ。

けれども、スペインの劇場公演で、タブラオのようにただヌメロを次から次に踊るってことは皆無。

ちゃんと1つの公演の中でコンセプトがあり、流れがある。

やっぱり、小さくてもテアトロ公演は面白い。

私は断然タブラオよりもテアトロLOVE派なので、テアトロ公演を梯子して回れるへレス・フェスティバルは本当に楽しい。

何よりも、町中でフラメンコが聞こえてくるのが楽しい。

最終日の公演が終わると、

「あー、もう終わっちゃった。日本に帰りたくないなぁ」

って思いと、

「早く日本に帰って、日本食を食べて、お風呂に入って湯船につかりたい」

って思いが交差します。

 

 

一度はへレス・フェスティバル、行ってみて下さい。

「ああ、フラメンコをやってて良かった」

って思うこと間違いなしです。

 

私は、特に何もなければ、来年も行くつもりです。

一年に一度くらいはスペインでレッスンを受けたり、公演を見たりしたい。

へレス、遠いんだけどね。

でも、行くと楽しいし。

 

 

この映像では、身体も軽く、足も動いているように見えます。

別人です!

https://www.facebook.com/dorantesflamenco/videos/10154541234597156/?pnref=story

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。