自分の気持ちに寄り添う

(01)諸々

フラメンコの曲は、どっちかというと暗い曲の方が多いように思います。
ただ、初心者にとってはミドルテンポの明るい曲が取っつき易く、形にもなりやすいので、最初は明るい曲を教えたいと思ってます。

アレグリアス、グワヒーラ、ガロティン

は初心者に教えやすい曲です。

突き詰めれば、どの曲も難しいのですが、やはり、ゆっくりのソレアやシギリージャ、タラントを教えるのに比べたら教えやすいし、習う方も習いやすい。

さて、ソレア・ポル・ブレリアというのは、ソレアより速いテンポで、でもブレリアより遅いテンポの曲です。
教え易さ、習い易さで言うと、そんなに難しくない曲です。
ただ、一本調子になりがちな曲なので、観ている人が飽きやすい曲です。

表現力もなく、表情も乏しくても、とりあえずアレグリアスやガロティン、グワヒーラといった曲は、その曲を聞いただけで微笑みが漏れるような威力があります。
だから、フラメンコをあまり良く知らない頃の人でも形になりやすいんですね。

が、いかんせん、ソレア・ポル・ブレリアはずっと眉間に皺を寄せてる感じがあって、ともすれば、フラメンコの歌をよく知らない人が振付をなぞるだけの踊りをすると、ただの無表情なロボットのようになってしまい、ソレア・ポル・ブレリアの面白さがちっとも感じられないような踊りになてしまいます。

ところが、この3人のソレア・ポル・ブレリア、良かったんです。

熱いものが感じられ、エネルヒア(エナジー)に溢れ、良かったんです。
ソレア・ポル・ブレリアの抑えた表情の中にも苦悩も見え、お見事でした。
3人のうち2人はまだまだ初心者の域を出ない人たちでしたが、大したもんでした。

ここから

成長曲線というのがあって、スポーツでも芸事でも、最初は大変なのですが、でも最初はぐんと伸びます。

ところが、そのうなぎ登りはいつまでも続きません。

ある程度経ってくると、成長は緩やかになってきます。

時にスランプとなり、止まったかのように感じる時もあります。

この舞台では見事なパフォーマンスを披露した3人ですが、だからこそ、ここからだと思います。

フラメンコに限らず、人生のあらゆる場面で


ここからはソレア・ポル・ブレリアの3人のことじゃなく、世間一般の話としてです。

フラメンコに限らずなんであっても、最初の頃に華々しく成功を納めると、一気に注目されますし、周囲から賞賛を浴びます。

当然です。
例えば、小学校1年生が、給食を食べる時にお行儀よく、ご飯をポロポロこぼさずに食べたら、
「えらいねぇ。お利口さんだね。お行儀がいいね」
と感心され、褒められます。

ただ、小学校6年生になれば当たり前のことなので、イチイチ褒められなくなります。

そして、1年生も、いつかは6年生になります。
その前に、2年生になり、3年生にもなります。
2年生になれば1年生という下級生も入ってきます。

下級生でいるのは楽なんです。

下級生でいた時に褒められたことは、年月が経ってくると褒められなくなります。
できて当たり前とみなされ、イチイチ言及されなくなります。

そこからです。

芸事はそこからです。

そして、自分が褒めてもらえなくなった頃に、ちょっと将来性を感じられる、でも今の自分よりはまだできない下級生が入ってきて、先生やバックアーティストたちに褒められたりします。
その人たちが、褒められたことを素直に受け取り、喜んでいる様が目に入ってきます。

そこからです。

芸事はそこからです。



自分に集中する。他人のことに意識を向けない。が必要になります。


先生に褒められなくなり、バックアーティストからも褒められなくなり、それどころかダメ出しが増え、それをクリアしてもイチイチ言及してもらえず、また新たなダメ出しをもらい…の永遠のループに入ります。

それでも、続くかどうか。

だから、そこからです。

それでも続けられる人は上手くなっていきます。

当然です。続けてれば上手くなるからです。

でも、続けるには、こういうメンタルの強さ、心の安定が必要となってきます。

ちょっと違うかな。
強さじゃないな。

大事なのは、
「他人の評価・賞賛をモチベーションにしない」
ということです。

他人の評価に一喜一憂する。
他人の賞賛があるからやる気になる。
他人に批判されたらやる気を失う。

これ(⇑)だと続けられないんです。

他人に自分の不安定な気持ちを分かってもらい、機嫌を取ってもらいってのを期待しても、その期待に応えられる他人は誰一人いません。
その期待はことごとく裏切られ、期待した分だけ絶望します。

だから、「自分で自分を認め、褒める」というのが大事になります。

自分しか自分の機嫌を取ってあげれません。
自分しか荒れ狂う気分の波を静めてあげることはできません。

他人にそれを求めたら、それは依存となります。
依存をすれば、依存された人は逃げていきます。

だから、「頑張ってるね」と今の自分に語り掛け、「それでいいよ。段々と上手くなってるよ。上を見ればきりがないけど、去年の自分より上手くなったね」と自分を認め、褒め、抱きしめてあげるのです。

そして、自分の中の『好き』が全てです。
それだけでいい。
逆に言うと、それしかない。

私は私に言っています

こういう心持ち、メンタル、心構えじゃないと、芸事を続けていくと、つらくなる時がきます。

これは、私が生徒に言っているようでいて、私は私に言っています。

そして、私が通って来た道で、今もその道を血まみれになりながら歩いています。
闇の中で見た一筋の光を頼りに這い上がろうとしています。

なので、これから同じような想いを抱えるであろう生徒たちに向けてのエールでもあります。

せっかくいいものを持っていたとしても、状況も環境も許していても、続かなくなる人たちも世の中には沢山います。
芸事は続けていると楽しいことばかりじゃなく、むしろ苦しいことが多いからです。
人間関係も難しいことは多い。

だから、好きという想いだけが全てです。

好きなら続く。
続けてれば上手くなっていく。
続けてれば、少しずつでもフラメンコに近づいて行く。

自分で自分を褒め、認め、労う。

それを他人に期待しない。

これができると続けられますし、他人と上手くやっていけるようになりますし、プラスのループに入りだします。

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