舞踊団公演9曲目:ソレア・ポル・ブレリア

(03)舞踊団公演

メアリーが病気でこの世を去り、いよいよエリザベスが国王になりました。
ところが、エリザベスの失脚を望み、王位を狙う者は多くいました。
エリザベスの周りは敵ばかり。
側近たちは彼女に結婚を勧め、「政治は夫に任せ、あなたはその人に守ってもらいなさい」と言いました。
エリザベスはロバートとの結婚を望みましたが、大反逆罪で処刑された息子との結婚は国中をあげて反対されてしまい、叶いませんでした。
でも、エリザベスは、彼女の夫となり自らが権力の座に就くことだけが狙いの男が自分を守ってくれるとは思えませんでした。

**********************************

元々はローマ・カトリック教会に属していたイングランド。
ヘンリー8世によってプロテスタントになりました。
それにより、カトリック教徒は肩身が狭い想いをするようになりました。

その後、ヘンリーの息子のエドワードが継ぐも、病弱で若くして亡くなります。
エドワードはプロテスタントでした。

さて、次の王位継承者は誰かと言うと、メアリー一世。
カトリック教徒です。
そこで、ざわついたのはプロテスタント信者たち。
王様がプロテスタントで、イングランド国教がプロテスタントだったから、デカい態度でいられました。
それがカトリック教徒のメアリーに変われば、イングランド国教はカトリックに変わることが予想されました。
「これはヤバい」とメアリーに即位させまいと、プロテスタントの貴族たちは当て馬を用意しました。
メアリーからすれば、テロ行為です。
当然ながらメアリーは挙兵し、呆気なく制圧しました。
これの首謀者がロバートの父でした。

メアリーが即位ますと、メアリーはプロテスタントの弾圧を始めました。
当然ながらプロテスタント信者たちは、生きた心地のしない日々を送りました。

と言う感じで、国王がプロテスタントなのか、カトリックなのかは、国民にとってとても重大事項でした。

さて、メアリーが亡くなり、王座はついにエリザベスに渡ります。
エリザベスは、アン・ブーリンの娘。
ヘンリーはアンの為にイングランドをプロテスタントに国にした位なので、当然ながらエリザベスもプロテスタントです。

震えあがったのはカトリック教徒たち。
カトリックのメアリー一世がプロテスタントを弾圧したように、プロテスタントのエリザベスが即位すれば、今度は不利な立場に追いやられるのはカトリックの人たちです。

メアリー一世をプロテスタント信者が暗殺しようと企てたことがあったように、エリザベスに対する暗殺計画もありました。


王様というのには、何が良くて、そんなのになりたいのでしょうかね。
名誉、権力、地位は、幸せに繋がらないのに。
私は、平民の方がよっぽど幸せだと思います。
SPを付けずに電車に乗れるし、週刊誌やテレビで噂されることもない。
会ったこともない名無しの権兵衛さんに、アンチコメントをツイッターに投稿されることもない。
皇族や王族は、好きな人との結婚ですら物議を醸す。
平民には好きな人と好きなことする自由がある。
自由以上に欲しいものってあるのだろうか。

名誉、権力、地位、お金持ち。
それらが幸せであるという価値観を持つ人たちがいるけど、本当にそうなのだろうか。
それと同じように、結婚したら幸せになれるという価値観も疑うことができる。
だって、結婚して不幸せになる人なんて山ほどいる。
『離婚してない=幸せな夫婦』ってのばかりじゃないのは、もう殆どの大人が知っている。
同じ家にいて口もきかず、「子供の為」「お金の為」「世間体の為」と仮面夫婦でいることが、離婚しないでいることより幸せとは限らない。
そんな位ならば、いっそのこと、一人の方がよっぽど幸せじゃなかろうか。

「政治は夫に任せ、あなたはその人に守ってもらいなさい」と側近たちはエリザベスに結婚を勧めました。
彼らは、女に国王という重責は無理だと思ったのでしょう。
だから、結婚して夫となる男性に全てを任せた方がエリザベスの幸せだと思った。
結婚したら、夫がエリザベスを守ってくれると思った。

でも、エリザベスはそれを信じませんでした。
「王位に惹かれて私と結婚したいと思う人が、私を愛し、守ってくれるとは限らない」
と冷静に分析していました。
母が無実の罪で父に処刑されたのですから、「結婚=幸せ」と思えなかったのでしょう。

でも、第三者の私たちにとっては客観的に物事を見れるので、エリザベスのその考えに驚きませんが、あの時代のエリザベスの立場で、『結婚して夫に守ってもらい、自分は世継ぎを産む』というのが当たり前で、それを周囲も当たり前と思っていたら、当然ながら洗脳されているようなものなのですから、「否!」と判断するのは簡単なことじゃありません。

「女に国王は無理」と洗脳されている人々に、
「女王は結婚して、夫となる人に政治は任せる」と洗脳されている人々に
「結婚しません。私が政治をやります!」と言うのは並大抵の覚悟じゃできません。
逆風は強かったことでしょう。

結婚しないで、世継ぎも産まないで、自分が国政に関わる。

そう決意したエリザベスの暗殺計画はいくつかあったそうです。
生きた心地がしない中で、エリザベスは何を思ったか。
「側近たちの言うように、結婚して、世継ぎを産んで、政治は夫に丸投げしちゃった方が楽かもしれない」
と思う夜もあったのではなかろうか。

でも、2つ選択肢があった時に、選ぶべきは難しい方。
簡単な方を選ぶと、その瞬間は楽でいいのですが、長い目で見て、堕ちてゆく。

エリザベスは難しい方を選んだ。

テロリストによる暗殺計画は、エリザベスが当たり前のようにある価値観や常識に従わなかったことの延長にあります。
エリザベスが戦ったのは、当たり前にある価値観や常識を押し付けてくる人々。
テロリストとの闘いは、それらを象徴しています。

皆、自分の中に正義を持ち、闘っている。
正義の反対は悪ではなく、別の正義って誰かが言ったそうな。
言い得て妙。

そんなエリザベスは、イングランド国教をプロテスタントに変更しますが、カトリック信者を弾圧することもなく、改宗を迫ることなく、「信仰の自由」をイングランド国民に与えます。
ものすごく画期的!

常識や固定概念よりも、『愛ある選択』を続けたんですね、エリザベスは。

コメントは受け付けていません。