舞踊団公演1曲目:アレグリアス

(03)舞踊団公演

歌や音楽に身体を委ねたいとか、
リズムを奏でたいとか、
踊る目的というか、踊る理由とか、意義とか、
上手く言葉では表せないのですが、
舞台で踊る際、皆、何等かの踊る理由があると思います。

私もソロで1~2曲踊るとか、
それが4曲であっても、
タブラオで普通にフラメンコを踊るだけとか、
そういう時は、
ただ単にフラメンコを踊りたいってだけの理由で踊る。
だから、
「じゃあ、なんで踊りたいの?」
と聞かれても困る。
理由なんてない。
嫌いなものに理由はあるけど、
好きなものには理由がないことも多く、
ただ好きだから踊りたい。

でも、劇場公演を作る時には違う。

理由がある。

私は私の中にある想いを伝えたい。
その手段が、
ストーリーを通して間接的に伝えることだったり、
芝居だったり、台詞だったり、音楽だったり、舞踊だったり。

私は、自分の胸の内にある想いを、自分の外に発信したい。

ということで、劇場公演を作る時には大抵、
それぞれの演目について、事前に語っております。

今回、時間にかなり追われていて、
事務的なことが多過ぎて、切羽詰まっている為、
毎回やってる、曲ごとの紹介をブログに書き綴るのを、
今回は止めようかと思っていましたが、
でも、やっぱり、できる限り、書いていこうと思います。
最後まで終わらないで本番を迎えてしまうかもしれませんが、
予めご了承下さい(^-^;

さて、舞踊団公演1曲目は『アレグリアス』です。
オープニングなので、踊りとかの中にすごい意味はないです。
出演者の紹介、プレセンタシオンです。

ただ、この曲というより、
この公演を通してのテーマがあり、
そのテーマをここで紹介いたします。

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『大好きな人と結婚して、子供を産んで、幸せな家庭を築きたい』
という夢を持てる女の子は、
無償の愛が溢れる幸せな家庭で育った子なのでしょう。

お父さんがお母さんを愛し、
お母さんはそれを受け取り、幸せそうにしている。
そんな二人を見ている娘は、
「家庭とはそういうもの」
と思うので、
自分もそういう家庭を築きたくなる。

でも、そうじゃない家庭の場合は?

『無償の愛』の対極は、『見返りを求める愛(見返りの愛)』。


女性は、パートナーの男性を失う恐れを持つ人が多い。
特に、前の時代の人たちはその恐れが強かったと思う。
なぜなら、相手の男性を失う=生活する術を失うことだったから。
経済力のない女性は、男性に養ってもらうしかなかったから。

相手の男性に嫌われないように、
機嫌を損ねないように、
場の空気を悪くしないように、
女性たちは頑張った。
幸せを続ける為、
「自分が我慢すれば丸く収まる」
と相手に尽くした。
相手が暴力をふるおうと、妾を作ろうと、
黙って耐えた。
それが、妻の鑑とまで言われたりしてた。

男は、女が自分の子供を産んでくれるからとか、
親の面倒を見てくれるからとか、
自分の身の周りの世話をしてくれるからとか、
その女が美しく、アクセサリーになるからとか、
名家の出身だとか、
自分の言うことを聞くからとか、
そんな理由で女を愛し、
女は、自分を養ってくれるからという理由で
男を愛した。

これ、見返りの愛。

でも、見返りの愛は、大なり小なりその辺に転がっている。
むしろ、見返りの愛がない方が珍しい位。

でも、我慢は続かない。
我慢の上に成り立つ愛は、いつかは限界を迎え、壊れる。

今度の公演の主人公は、『エリザベス1世』です。

ご存知の方も多いかと思いますが、
エリザベスの父は、イングランド史上最強にして最悪の
鬼畜王ヘンリー8世。

男児を生まない嫁は用無しと妻を捨て、
新しい女に鞍替えするというのを続け、
娶った女房の数はなんと6人。
要は、✖5。

エリザベスの母は、父ヘンリーの2番目の奥さんでした。
映画にもなった、割と有名人、アン・ブーリン。

なんとエリザベスの母・アン・ブーリンは、
父によって断頭台に送られ、処刑されてしまいます。

理由は、「男の子を産まなかったから」。
なんと無情な。
見返りの愛の究極。

エリザベスは生まれながらに期待外れの子でした。
なぜなら、女の子だったから。

自分が女の子として生まれたが故に、
母は父に殺された。
「もし、私が男の子だったら、母は父に殺されなかった筈」
「もし、私が男の子だったら、父は私を愛してくれた筈」
エリザベスはそう思わざるを得なかったことでしょう。
悲しい人生の幕開けですね。

でも、このエリザベス、とても聡明だった。

「見返りを求める人と愛を交わせば、
その人の求めるものを自分が与えられない時、
私は母のように殺されるかもしれない」
と気付くのでした。
(あくまでも、私の舞台上のエリザベスの設定です)

エリザベスが賢かったところは、
頑張って「見返り」を相手に与えることではありませんでした。

彼女が求めたもの。
それは、無償の愛。

「父や母のようにはなるまい」
と幼きエリザベスは誓った。

王位継承権を持つエリザベスは、
権力欲の強い野心家の男たちにとって、
利用価値が高く、
見返りを求める男たちに狙われる存在。
生まれながらにして、
平穏な人生を送るハードルの高いことったらありゃしない。

そんな中でもエリザベスは、逆に、野心家の男たちを手玉に取り、
強く生きて行くのでした。

そんなエリザベスの物語は、アレグリアスで始まります。

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